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ショートレビュー「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う・・・・・評価額1650円」
2017年02月23日 (木) | 編集 |
人生の「中身」を確かめたい。

「ダラス・バイヤーズクラブ」「私に会うまでの1600キロ」など、どん底に落ちた人間たちの逞しい復活劇を得意とするジャン=マルク・ヴァレ監督と、怪優ジェイク・ギレンホールが初タッグを組んだヒューマンドラマ。
ある日突然、それまでの人生が吹き飛んだら、人間はどうなるのか。
ギレンホール演じるディヴスは、妻の父が代表を務めるウォール街の投資銀行にコネ入社して順調に出世し、何不自由ない生活を送っている。
しかしある朝、妻の運転する車に乗っていた二人は交通事故に遭い、ディヴスは助かったものの妻は亡くなってしまう。

突然の事故で妻を亡くしたのに、「悲しくもなんともない」という物語の発端は、去年の「永い言い訳」と一緒。
ただ、起点となる心の状態は同じでも、その理由と物語の展開は全く異なる。
あの映画のモッくんは、妻が事故死した時に愛人を家に引っ張り込んでいるような最悪な奴で、ベースにあるのはタイトルが示唆するように贖罪意識。
対して、本作のギレンホールは別に不貞を働いているわけでも、妻との仲が破綻してるわけでもない。
ただ、いつも当たり前に存在していた妻がいなくなったのに、涙すら流すことが出来ない自分自身に戸惑い、自分は本当に妻を愛していたのか、結婚生活とは何だったのか、それまでの人生の中身を改めて確かめなければ、前へ進めなくなってしまうのである。

そして彼は、人生を文字通りに解体し始める。
生前の妻が「故障しているから直して」と言っていた冷蔵庫を切っ掛けに、会社のパソコン、トイレの個室、ついには自宅まで重機でバラバラにしてしまう。
だから原題は「DEMOLITON(取り壊し)」
ただこれは、あくまで再生のための破壊。
劇中のセリフにもあるが、全てはメタファーだ。
冷蔵庫は知らなかった妻の心、パソコンは実体のない数字を扱う仕事の中身、そしてトイレの個室は自分自身、家は結婚生活そのもの。
テレビに映し出されるニホンザル、廃棄される予定のメリーゴーランド、妻の残したメモ用紙。
細かく設定されたシャレードの配置と、小道具の使い方の上手さに唸る。

「永い言い訳」のモッくんが、竹原ピストルの家族との関わりを通して心の平穏を取り戻してゆくように、本作でもナオミ・ワッツが好演するカレンと、自分はゲイではないかと悩むジュダ・ルイス演じる息子クリスとの交流が、ディヴスにとって大きな転機となる。
もっとも、竹原ピストルはモッくんとは真逆のキャラクターだったが、カレンとディヴィスはどちらかといえば似た者同士。
だから疑似家族の二人の父親とは異なり、友達以上恋人未満で心のうちを明かせる同士に近く、微妙な距離感を保ったのがいい。
カレンとクリスの精神的な後押しもあって、十分な創造的破壊の後、ディヴスはようやく喪失を実感し、亡き妻のために彼なりの喪の仕事をすることで、人生を前に進めることが出来るのだ。
人間の弱さと、人を想う気持ちの切なさにそっと寄り添う、詩情豊かな佳作である。

突然の人生の転機に心が対応できず、傍目には狂気にも見える破壊衝動に突き動かされるディヴスを演じるジェイク・ギレンホールが相変わらず素晴らしい。
この穏やかだけど、どこかいっちゃってるキャラクターは、彼に合わせて当て書きされたようにピッタリだ。
癖のある俳優の魅力を巧みに引き出すジャン=マルク・ヴァレは、ハイレベルの安定が続く。
今年は「私に会うための1600キロ」のリース・ウィザースプーンと再タッグを組んだ「Big Little Lies」 、エイミー・アダムズ主演の「Sharp Objects」の2本のTVシリーズを手がけるようだが、こちらも楽しみだ。

今回は主人公夫婦がロング・アイランドに住んでいるので、この島の名を持つカクテル「ロング・アイランド・アイスティー」をチョイス。クラッシュド・アイスを入れたグラスに、ドライ・ジン15ml、ウォッカ15ml、ホワイト・ラム15ml、テキーラ15ml、ホワイト・キュラソー15ml、レモン・ジュース15ml、コーラ適量を注ぎ、ステアする。
お好みでレモンスライスとチェリーを飾って完成。
やたら材料の種類が多いカクテルで、アイスティーと言いつつも紅茶は一切使われていない。
適度に甘口で飲みやすいが、ハードリカーの集合体なのでアルコール度数は高い。

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