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お嬢さん・・・・・評価額1700円
2017年02月26日 (日) | 編集 |
欲望の罠にかかるのは誰か。

1930年代、日本統治下の朝鮮を舞台に、”お嬢さん”の莫大な財産を巡るコンゲームが繰り広げられる。
プレイヤーは狡猾な詐欺師、薄幸の令嬢、成り上がりの富豪、訳ありの侍女。
原作は英国の作家サラ・ウォーターが、ビクトリア時代の英国を舞台に描いた「荊の城」で、2005年にはサリー・ホーキンス主演でテレビドラマ化されている。
複雑怪奇な四つ巴の騙し合いは、倒錯したエロスの館で、先の読めない官能のサスペンスとなって観客を幻惑。
145分の長尺を全く飽きさせない。
文字通り体を張った俳優陣の好演も見もので、韓国映画界きっての映像テクニシャン、パク・チャヌク監督の現時点での集大成といえる大作である。
※ネタバレあり!核心部分に触れています。

1939年、朝鮮。
犯罪グループに育てられた孤児の少女・スッキ(キム・タエリ)は、 ”藤原伯爵”を名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)からある依頼を受ける。
それは、莫大な資産の相続人である華族の令嬢・秀子(キム・ミニ)の侍女として働き、”伯爵”の結婚詐欺を助けること。
秀子は深い森の中にある屋敷で、希少本コレクターである叔父の上月(チョ・ジヌン)とと暮らしている。
”伯爵”の計画は、スッキの助けを借りて秀子を誘惑し、駆け落ちして結婚した後、彼女を日本の精神病院に入院させて財産を奪うというもの。
スッキの献身的な態度に、秀子は次第に心を開いてゆき、計画は順調に進む。
そして、いよいよ駆け落ちの日がやってくるのだが・・・・・


怒涛の面白さである。
天才パク・チャヌクの作品は、しばしば才気迸るテリングのパワーと筋立てのバランスが悪く、勢い余ってつんのめってしまうことがあるが、本作ではチャヌクとチョン・ソギョンによる脚色が非常に上手くいっている。
物語は三部構成となっていて、第一部が主にスッキの視点から見た、秀子との出会いから駆け落ちまでの顛末。
第二部は、同じ時系列を今度は主に秀子の視点で語るネタばらし編。
そして第三部では、四つ巴のコンゲームの末に何が起こったのか、遂に全体像が見える。
第一部、二部はそれぞれに切り欠きのように欠損している描写があり、組み合わせて初めて真相が分かる仕組み。
物語の進行とともに登場人物の実像が少しずつ見えてきて、次第にその心に隠された本当の感情が浮き彫りとなるというわけだ。

第一部で語られる事件の表面は、上記のあらすじ通り伯爵とスッキの共犯による結婚詐欺。
秀子の叔父の上月は、実にところ日本人ではなく、日本の名家と婚姻を結んだ朝鮮出身の成り上がり者だ。
彼の功名心を利用して接近した詐欺師が、”藤原伯爵”と名乗って屋敷に入り込み、秀子の侍女として送り込んだスッキに手伝わせて密会の機会を作り、誘惑する。
首尾よく秀子がその気になり、日本に逃げて彼女を精神病院に入院させようとしたところでどんでん返し。
実はもとから相思相愛の伯爵と秀子は、上月から逃れるためにスッキを秀子の身代わりとして精神病院に監禁し、秀子はスッキに成り代わって生きていくという計画を立てていたのだ。
騙されたスッキは、自分を朝鮮人の侍女だと思い込んでいる、哀れな華族の令嬢として病院に囚われ、伯爵と秀子が逃亡に成功するとことで第一部完。

ここまででも結構意外性のある物語なのだが、第二部になると今度は第一部で起こっていたことが丸ごとひっくり返される。
スッキは計画通り、献身的に秀子に尽くすことで彼女に取り入るのだが、元々素直な性格ゆえに籠の鳥として孤独な人生を送る秀子に深く感情移入してしまう。
ついには、伯爵との初夜のために、秀子に夜の営みを手ほどきするうちに、主人と使用人の関係を超えて情愛を結んでしまうのだ。
二人は愛し合うにようなり、秀子はスッキを自分の身代わりにさせるという伯爵の陰謀を明かし、元の計画を女二人で伯爵と上月を同時に罠に嵌める、逆転の計画に書き換える。
そして、騙し騙され二転三転するコンゲームは、第三部において自由を得た女たちの新たなる旅立ちと、男たちの悲惨な破滅で幕を閉じるのである。

パク・チャヌクといえば代表作である「復讐三部作」を含めて、復讐を作家とのしての根源的なテーマとしているが、本作も端的に言えば女たちによる、男性至上主義への復讐譚と言えるだろう。
この映画に登場する主要な四人の男女のうち、二人の男は基本的に女を将棋の駒としか思っていない。
屋敷の主である上月は、日本領朝鮮にあって支配者である日本の崇拝者として描かれる。
彼は日本人になりたくて日本人と結婚し、日本のエロティックな希少本を集め、日本風と洋風が折衷した屋敷に住んで、日本風の生活をしている。
さらに自分が認められるために、日本人の上流階級の男たちを集め、あられもない内容の稀少本の朗読を秀子にさせて辱めることにより、生粋の華族である彼女を精神的に支配して満足している卑劣な男だ。
もう一人の自称”伯爵”の詐欺師もまた、スッキを犠牲にして秀子の財産を手に入れようとしており、人を思いやる心を持たない冷酷な人物として描かれている。

男たちが権力と金を得るのに必死なのとは対照的に、スッキと秀子はお互いを知ってゆくうちに、邪な考えをぬぐい去り、二人で協力し合って抑圧からの脱出を目指す。
彼女らの境遇も十分に同情を誘うもので、第二部終盤に至って観客はすっかり彼女らにシンパシーを抱いているので、熾烈なコンゲームの末に二人が男たちを出し抜くプロセスは痛快だ。
そして、もはや日の目を見ることの無い男たちの最期と、自由を得た女たちの愛の営みが対照的に描かれるクライマックスは、外連味たっぷりの暴力と官能の描写が組み合わさり、いかにもパク・チャヌクらしい。
秀子とスッキの濃厚なベッドシーンは、秀子が朗読する希少本の春画を思わせるハードかつコミカルな味付けになっており、日本のヘンタイ文化の韓国的解釈としても面白い。
俳優陣は皆熱演だが、かなりの比重を占める日本語演技にはやはり微妙な違和感がある。
ただ日本人の観客から観ると、日本統治下の朝鮮の森に建てられた虚構の館で、日本人のふりをしながら騙し合いをするという、本作のシニカルなメタ的な構造の中では、朝鮮語訛りもある種すっとぼけた演出効果になっている様に思う。
官能描写ゆえR-18指定なので高校生以下は観られないが、大人は必見の大怪作である。

今回は二人のヒロインの物語ということで、Bの頭文字を持つ2つの酒で作るカクテル、「B&B」をチョイス。
リキュールグラスにベネディクティン30mlを注ぎ、その上にブランデー30mlをそっとふろーとする。
パッと見は同じ様な茶色の酒だが、比重が異なるので綺麗な層を形作る。
飲んでゆくとブランデーのコクにベネディクティンの甘みが混ざり合って、複雑な味わいとなる。
非常に強いので、そにままめくるめく官能の夢の世界に連れて行ってくれるだろう。

しかし成人映画が製作費12億円、本国だけで動員400万人って凄い。
人口5千万人の国で、どんだけ映画好きなんだ韓国人。
残念ながら日本では成立しない企画だろうな。

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コメント
この記事へのコメント
4文字ことば
お〇ん〇
〇ん〇こ
韓国語でどういう字幕がついたのだろう。
微妙なニュアンスがあり、むしろ日本人の方が楽しめるのではないかと思いました。
2017/02/28(火) 11:46:22 | URL | まっつぁんこ #L1vigvx6[ 編集]
こんにちは
>まっつぁんこさん
その通りですよね。
日本語の比重が思ったより大きくて、エロい部分はほとんどそうだったような。
だからこの映画を一番楽しめるのは実は日本人じゃないかと思います。
2017/03/02(木) 14:23:07 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんわ
映画の構成としては『運命じゃない人』と同型。
けれどこれがパク・チャヌク流なのか、第一部の終わりでの大逆転劇から怒涛の展開に魅せられてしまいましたよ。
そして私もこの映画は日本人が一番楽しめるでしょうね。
ヘンタイ文化に免疫のある一部の日本人が♪
2017/03/07(火) 23:57:00 | URL | にゃむばなな #9K64Lzaw[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
私はあのタコ使ってなんかやってくれるのかと期待しちゃいましたよw
日本のエロを外国から解釈するとこうなるのかという点も面白かったです。
2017/03/12(日) 21:15:00 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは
こんにちは。
構成が絶妙でした。
パク・チャヌクは「復讐」の人でしたよね。そうでした、そうでした。そして、恐らく
>本作も端的に言えば女たちによる、男性至上主義への復讐譚と言えるだろう。
なのでしょう。
でも、私、この作品に監督の「愛」への渇望を感じてしまいました。
2017/03/24(金) 14:51:44 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
この映画の場合、愛が勝つことがそのまま復讐になっていますね。
男たちは本当の愛を知らない訳ですから。
女たちの勝利を描く作者の男性としての視点が、愛の渇望を感じさせるのかもしれません。
2017/03/25(土) 23:25:29 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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お嬢さん@スペースFS汐留
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